06.8.23
「こんばんは。三日に一冊、気になる装丁[2006夏コミ編]、ついに最終回でございます。」「最終回っつっても3回しかやってないですけどね。」「それはさておき、お待ちだった方もいらっしゃるかも知れませんが今回は『平均律』さんの同人誌マジカルガール・オルタナティヴについてアレコレと。」「ってコレ新刊じゃないじゃないですか!」「まあ夏コミ会場で入手したモノには変わりありませんので、御容赦頂きたい。」「このコーナーの主旨的にどうかと思うけどなあ。」「いや良い本はいつ語っても良い事に変わりはないと思いませんか?」「本の善し悪しではなくアナタの態度が問題なんですが。」「些細な問題じゃないですか。読む人が興味を持っているのは僕らのことなんかではなくて、本の話だと思うんですがね。というわけで先へ進めます。」「毎度強引な。で、こちらはどーいった同人誌なんですかね。」「え〜と、架空の魔法少女たちの設定紹介が主な内容となっております。この本の世界観では魔法少女が広く一般に浸透した存在となっておりまして、この世界に於いて代表的な魔法少女を紹介していく、といったモノですね。」「アンタ架空設定モノばっか持ってきますね!」「いやいやいや、これには事情がありましてですね。どうもデザインだとか編集に力が入ってる同人誌にはこうした架空設定資料集だとか、イラスト集とかが多いんですよ。やっぱり設定資料集とかイラスト集とかだと、編集とか本のコンセプトといった部分が漫画系同人誌に比べて重要になってくるじゃないですか。」「そうだなあ。漫画に比べて資料集やイラスト集はパッと見て誰もが面白く読める、というモノではないだろうし。どういう切り口と構成で見せて行くのかで、見た時の面白さが違ってくるからなあ。」「そうなってくると自然と『見せ方』に大きく関わるデザインというモノについて力を入れざるを得ないワケですよ。多分。」「まあ納得いったところでこちらの本の話に戻りませんか。」「で、表紙なワケですがどうですかコレ。語弊があるかもしれませんが、良い意味で普通にオシャレですよね?」「いやーまさか同人誌でこうした方向のセンスの表紙が見られるとは思いませんでした。なんと言いますか、化粧品パンフとかファッション誌の隣に置いてあっても誰もツッコまないですよ多分(笑)」「むしろ変なファッション誌よりも断然オシャレですよ。服部一成さん的な突き抜け感がありません?いやホント同人誌でコレが出てくるとは予想だにしませんでした。で、この表紙だけで終わってたらちょっと嫌味な同人誌でしょ?オタクとしては。でも中を開くとすごくこの表紙がしっくり来るんですよ。」「では中面行きますか。」




「どうですか?しっくり来ません?」「ああー、なんだろう。このイラストだと何故か違和感なくデザインがマッチしますね。このイラスト、何だかすごく現実のファッション写真と近いような空気を感じます。光の扱い方とか、空間の切りとりかたとかかな?女の子の体の線とかも、なんだか女性的な印象を受けますよね。オシャレなデザインと組み合わせてみても違和感が無いなあ。」「でもちゃんと『萌え絵』の手法といいますか文法といいますか、そういったモノにも沿っているんですよね。萌え絵の手法を使いつつもアカデミックな絵の手法を取り入れた絵っていうのは、例えば安倍吉俊さんだったりとか、村田蓮爾さんだったりとか脈々と続いているモノだとは思うんですけれども、そうした絵とこの同人誌のようなファッション的なデザインと組み合わせたモノって、あんまり見たことがないと思いません?村田さんの『robot』にしてももうちょっと男性的なデザインじゃないですか。」「ちょっと新しい感覚ですよね、コレは。」「普通、萌え系の絵と女性ファッション的なデザインを組み合わそうなんて考える人、居ませんからねえ〜。」「それで違和感が無いってのもすごいですけどね。」「新しい分野の開拓に成功した感じがありますね。実はコチラの本をつくっていらっしゃる方はデザイナーだそうでして。」「ああ〜なるほど、ちょっと納得しました。仕事上で得たものと好きなものとが融合して生まれたモノなんでしょうか。」「どうなんでしょうね。」




「他のページも良いんですよね。前回の『猫耳警察』さんでも触れましたけど、ノンブルの処理とか可愛いですよね。魔女のシルエットとか、クロネコのシルエットにノンブルを入れてたり。」「余白の扱いもさすがに本職の方と言いますか、気持ち良いですねえ。スキがありつつもスキが無いというか。このイラストの構図も、普通なかなか怖くてできないような気が。」「不安定な構図のイラストなのに、テキストのレイアウトによって安定して見えますもんね。上手いなあ。」「あとフォントの使い方もデザイナーならではと言いますか、ギリギリのところで安定して見えるような使い方を。」「と、言いますと?」






「本文の書体が、えーとこれはなんだろう、詳しい書体は分かりませんが明朝体と丸ゴシック系の書体を組み合わせるという荒技に。」「あ、コレ『筑紫明朝』と『じゅん』ですね。奥付に書いてありました。」「奥付に使用書体!!(笑)それも同人誌では見た事ないなあ〜。 こだわられた部分なんでしょう。」「しかしこの明朝と丸ゴシック系のフォントの組み合わせってのも怖くてあんまりやらないですよねえ。全然印象の異なるフォントなのに、何故かこの本では自然と読めるという。」「明朝体を使用した文章はイラストの魔法少女に関して第三者が語っているという設定なんですが、丸ゴシック体の部分は魔法少女本人のメッセージなんですね。きちんと文章の内容に応じて効果的な書体をセレクトという、言われてみれば普通のことなんですが、ちゃんと意識して使い分けていることが、不自然さを出さずに読む側にうまく緩急を与える結果に。」「このちょっとしたサービスが良いですよね。ああ、あと触れてなかったんですけど冒頭のあいさつ文も良いんですよ。」「ほほう。」「同人誌の一番最初の挨拶文って、作者のぶっちゃけトークとか、あくまで本の世界観から一歩離れて作者が語ることが多いじゃないですか。『いやー、今回は寄せ集めのマンガばっかになっちゃいました。何はともあれ、楽しんでもらえれば嬉しいです〜』とか。」「まあ普通はそうでしょうね。」「でもこの同人誌は違うんですよ。何から始まるかと思えば、『ご存じの通り、現代の魔法少女はその存在が広く一般へと知れ渡り、その本来の目的である「人類に対する敵対勢力の排除」から離れ、政治・経済の中枢を狙うVIPたちの身辺警護と言った実務的な任務に身を置くことが多くなりました。〜』って始まるんですよ。あくまで同人誌の架空世界の住人として語ってるんです!(笑)世界観を徹底して貫いてますよねコレ。いいなあ〜。あと、その挨拶文の最後も好きなんですよね。『〜少しでも身近に感じていただく一助になれたら、これに勝るよろこびはありません。 在原晃士(文と写真)』。「文と写真」ですよ!普通は「漫画・文章:在原晃士」とかじゃないですか。こういう部分まで世界観を壊さないようにしているっていうのは、ホントにサービス精神の成せるワザだと思いません?」「いやあ、読んでて気付くとちょっと嬉しくなりますよね。やっぱり他人に向けて発信するものにはサービス精神が欠かせないと思います。」「ところで僕らのサービス精神は足りてるんでしょうかね。」「ああ〜、最後はソコに触れちゃうんだ・・・」


  

 

  

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